誰に投票するか?を、どう選ぶか?

(承前)
形式的なことは前回書いた通りなので、そちらを参照して欲しい。
ここでは、候補者の中から投票したい人を選ぶ際のポイントについて記す。
選挙にはいくつかのパターンがある。

選挙が無いこともある

まず、定数と候補者数が同じ場合は、無投票となる。市町村長の選挙は、(当然だが)定数は1であるが、現職一人が立候補して対立候補がいない場合、無投票当選となる。この場合、そもそも選挙自体が行われない。(だから、立候補者が誰もいない見込みの選挙に自分が立候補すれば、無投票で当選できるかも知れない)
候補者数が定数を超える場合、選挙が行われることになる。以下、この場合について記す。

基本的な考え方

当選させたい候補者がいる場合は、その候補者名を書くのが基本である。ただ、戦略的にそうしない場合もある。
ある選挙で、定数1に対して3人の候補者がいたとする。分かりやすくするために、黒山、白川、赤松(いずれも仮名、以下同じ)とする。
黒山候補を支持していて、是非当選して欲しい場合は、黒山候補に投票するのが基本である。

戦略的に動く必要もある

しかし、3名のうち、白川候補と赤松候補の接戦が見込まれ、黒山候補は当選できそうにない場合はどうだろうか?
黒山候補の名前を書くことに意味が無いとまでは言えないが、ここで戦略的に考えるべきことは、黒山候補の次に当選させたいのは誰か、あるいは、最も当選して欲しくないのは誰か、ということだ。
黒山候補ほどではないにせよ、白川候補の主張には一定程度賛成できるが、赤松候補の主張にはまったく賛成できない場合、あえて赤松候補を当選させないために、ライバルである白川候補に投票することで、白川候補の得票数を相対的に引き上げて、赤松候補を落選させるという戦略がある。
黒山候補の得票と白川候補の得票の合計が赤松候補の得票を上回っていたとしても、赤松候補の得票が一番多い場合は、赤松候補の当選となるからだ。
自分にとって最善の選択ではないが、次善の策と言える。

誰に投票したかはバレない

投票は無記名(投票する人は匿名で投票できる)ため、誰が誰に投票したかは分からない。(もっとも、獲得票数が1票で、候補者自身が自分に投票していた場合は、自分以外は誰も自分に投票してくれなかったことは分かるが…・苦笑)←生徒会選挙かよ?
そのため、候補者や支持者から、「今度の選挙では○○をお願いします」と言われたとしても、あるいは、家族や親戚から「○○に投票しろ」と言われたとしても、それを守らなかったからといってバレることはまずない。

誰に投票するか分からない場合

それでは、どの候補者に入れるべきか分からない場合はどうすれば良いのだろうか?

まず各候補者の主張を知ること

それは、各候補者の主張を知ることだ。選挙公報、立会演説、チラシ、ポスターなどを読み、それぞれの候補者が何を主張しているのか、当選して何をしようとしているのかを理解し、自分の意見に一番近い人を選んで(または、先述の通り、自分の考えと一番遠い人の対抗馬を選んで)投票する。こうすることで、自ずと政治に対する関心を持つことができるだろう。

してはいけないこと

名前がカッコいいとか、覚えやすいとか、顔が自分の好みだとか、そういうことはどうでもいい。同じ選挙でも、某アイドルグループの投票とは違う。
また、家族や親戚、友人、知人、お世話になった人が立候補している場合でも、その人への“恩義”や“義理”で投票するべきではない。例え身内であったとしても、議員としてふさわしくないと思うならば、投票するのは避けるべきだ。公私は混同してはならない。

留意すべきこと

とても残念なことだが、選挙活動中、ひたすら名前を連呼して回るだけの候補者もいる。名前よりも、自分が何をしようとしているか、どういう主張をしているかを述べるべきである。
もうひとつ大切なことは、選挙は理想を語る場ではないということだ。夢物語に翻弄されてはならない。夢を語るために政治家がいるわけではない。政策を実行すること、法律や条例を作ることが政治家の役割だ。綺麗事を言っていても、政策として実現可能なものではないなら、評論家としてはおもしろくても、政治家としては適任ではない。

怪しい候補者たち

同様に、地方議会の選挙なのに国政レベルの問題を主張している場合(例えば、地方議会の選挙なのに「憲法が…」と言っている場合)も、論点がズレている。地方議会は国会ではないから、その自治体のことについて意見を述べるべきで、国家レベルのことを述べるならば、国政選挙に出るべきだ。
だから、国政選挙にも、首長選挙にも、都道府県議会議員選挙にも、市町村議会議員選挙にも、ありとあらゆる選挙に立候補しまくっている人は、何がしたいのか分からない。「議員」という身分が欲しいだけだと考えた方が良い。もちろん、市町村議会議員だった人が市町村長を目指すことや、地方議会議員だった人が国会議員を目指すことは珍しいことではない。地方で議論していたが、これは国全体でやるべきだと国会議員に立候補することは、十分にあり得る。ただ、当選してもいないのに、次から次から目的の異なる選挙に出まくっている人は、警戒した方が良い。
よく似た話で、都道府県議会議員選挙に落選した後で、市町村議会議員選挙に立候補する人(統一地方選挙の場合、スケジュール的には可能な場合が多い)も、何がしたいのか分からない。これもやはり、「議員」という身分が欲しいだけなのか?と疑った方が良い。
こうした候補者に加え、当選できる見込みがないのに立候補する人は少なからずいる。一般に「泡沫候補」と呼ばれるが、こうした候補者がなぜ立候補するのか?については、改めて記すこととする。