(少し復習)選挙権と被選挙権

今年が選挙の年であることから、選挙権や被選挙権について書いてきた。選挙権は投票する権利であり、政治に参加する権利である。同時に、被選挙権は自ら政治家となる権利であり、選挙権のある国民・都道府県民・市町村民に選んでもらう権利である。ともに、政治に参加する権利、つまり参政権であり、憲法で保障されている権利である。
選挙権と被選挙権については、既に説明している記事も併せて参照いただきたい。今回は、選挙の立候補に関することを書くことにする。(たぶんあまり知られていないこと、多くの人が部分的にしか知らないことがほとんど)

立候補の前に

まずは説明会に参加しよう

選挙に立候補しようとする場合、最初にやることは、説明会への参加である。もちろん、所属政党の公認を得る等の作業があるが、これは所属政党内の問題であり、立候補手続きではないので、割愛する。
立候補する場合、各選挙管理委員会が開催する立候補予定者を対象とした説明会があり、それに参加することになる。日程は、選挙ごとに、また、各選挙管理委員会ごとに異なるので、立候補を予定している人は、そのスケジュールを前もって確認しておく必要がある。
説明会では、立候補や選挙活動等についての説明が行われると同時に、立候補手続きに必要な書類一式が配布される。その様式がなければ、立候補手続きができないので、説明会に参加しなければならない。参加しなかったからといって立候補する権利が無くなることはないし、罰則もないが、参加するのが通常である。
この説明会の参加は無料で、予約も不要、誰でも参加することができる。候補者本人に加えて、秘書等を連れて行くことができる(この人数については、各選挙管理委員会ごとに、一人の候補者につき何人までという制限を設けていることが多い)

説明会は無料!だが…

説明会の参加は無料だが、説明会の会場に入るためには受付で記帳する必要がある。出席者の氏名、住所、連絡先、所属政党等の記載を求められる。しかも、この記載された内容は、報道関係者に公表される。何党の誰が立候補を予定していて説明会に参加していた、誰が無所属で立候補を考えているということは、報道関係者の知るところとなる。ただ、余程の大物か有名人でもない限り、この時点で報道されることはない。(立候補するまでは私人である)

説明会の内容

説明会では、立候補の手続き、必要な書類が何と何で、どれをいつまでにどこへ出せば良いか、等々の説明がある。また、選挙運動についての説明や注意が為される。(このあたりは、また改めて書くことにする)

立候補届出

立候補するための資格は、各選挙ごとに異なるが、@その選挙において被選挙権を有していること(住所による制限と年齢による制限)、A重複立候補者ではないこと(衆議院の選挙区と比例区の重複を除き、複数の選挙区から同時に立候補することはできない)、B特定公務員でないこと(投票や開票の管理者、選挙長は立候補できず、公務員は現職のままでは立候補できない。公務員の立候補については、一部例外があるが、詳しく知りたい人は公職選挙法第89条参照)
立候補の届け出については、本人が自分で届け出る場合と、他人が推薦して届け出る場合とがあるが、推薦の場合は本人の承諾書が必要な点を除けば、手続きは基本的に同じである。推薦といっても、本人の承諾書が必要だから、本人に無断で勝手に立候補してもらうことは当然できないので、知らない間に自分が立候補させられていたということはないから、安心して良い。

届出に必要なもの

立候補届出の際には、@候補者届出書、A供託証明書、B宣誓書、C戸籍の謄本または抄本を提出しなければならない。また、必要に応じて、D所属党派証明書、E通称認定証明書、F候補者推薦届出承諾書、G選挙人名簿登録証明書を提出する必要がある。@〜Cは全員必須、D〜Gは、必要なときのみ提出が求められる。
Aの供託については、供託金を納めたことの証明書を提出するので、予め法務局に供託金を納め、そのことを証明する証明書を提出することになる。供託金(現金)を立候補届出に持参しても受け付けてもらえないので注意が必要。
Bの宣誓書は、被選挙権があること、重複立候補ではないことを誓うもの。
Cの戸籍謄本または抄本については、住民票ではないので注意が必要。必ず、戸籍謄本か抄本である必要がある。自治体によっては、戸籍謄本のことを全部事項証明書、抄本のことを個人事項証明書と記していることもあるが、同じである。謄本はその戸籍に記された人全員のことが記されているのに対して、抄本はその人にかかる部分のみを抜粋したものである。なお、戸籍謄本または抄本については、極力3か月以内に発行されたものが望ましい。
Dの所属党派証明書は、政党や団体に所属している場合に提出が必要だが、無所属の場合は不要(出してく手も出せない)。
Eの通称使用については、戸籍に記された名前以外で立候補したい場合にのみ必要となる。ただし、既に本名に代わるものとして広く通用していることを証明しなければならない(裏付ける資料の提出が求められる)。なお、漢字をその読みに従って平仮名で表記にするだけの場合は、そのことを申請するだけで足り、資料を提出する必要はない。
FとGとは、推薦届出の場合で、Fは既に説明した通り本人の承諾を得ていること、Gは推薦者がその選挙の選挙人名簿に記された人でなければならないので、その証明が必要である。

立候補届出の手順と注意点

提出先は立候補しようとする選挙区によって異なり、具体的なことは説明会で指示がある。告示日の午前8時半から午後5時までが受付時間で、遅れた場合は受理されない。8時半に受付場所に来ている人でくじ引きをして、届出の順が決まる。選挙報道で「○○選挙に立候補しているのは、届出順に…」と放送されるが、この順はくじによって決められる。いくら朝早くから並んでいても、一番になれるわけではないから、ある意味“運”である。この届出順は、ポスターを貼る順でもあるので、こだわる人は多い。くじで一番になった人は、ポスターで@と書かれた区画に自分のポスターを貼ることができる。
また、8時半までに到着していなかった場合は、最後のくじを引いた人の後の順位となり、8時半以降に複数の人が到着した場合には、到着順となる。仮に、8時半の時点で、A・B・Cの3人がいる場合、この3人でくじ引きを行い、8時半を過ぎてから、D、E、F、Gの4人がこの順で現れた場合には、A〜Cの3人の届出が終わった後にD→E→F→Gの順で届出を行う。
ちなみに、せっかく一番のくじを引いたとしても、届出書類に不備がある場合には、届出が受理されず、くじによる届出順位の最後に下がることになる。また、くじ引きで順番を決めた人の手続きが全員終わっても、書類の不備や訂正が完了していない場合は、さらに順位が下がることになる。A・B・Cの3人でくじ引きをして、C→A→Bの順になったとして、Cに書類の不備や誤りがあった場合には、Aから届出を行い、次にB、その後にCとなる。しかしこの時点でCの書類の訂正が間に合わず、あるいは必要書類が揃っていない場合は、8時半にいなかったDが先に届出を行うことになる。こうしたトラブルを防ぐため、告示日前に事前審査が行われていて、候補者は事前に審査を受けておくことが奨励されている。