新生活を始める人のために

4月から新生活を始める人も多いと思うので、そういった記事も書いておくことにする。
進学や就職のため、既に3月中に引越を済ませた人も少なくないだろう。引越を済ませたときにやってくる招かざる客について、特に初めて一人暮らしをする人たちは知っておいて欲しい。

招かれざる客

獲物の物色

「招かれざる客」とは、例えば、訪問販売、新聞屋、N×K、インターネット、ケーブルテレビ、宗教勧誘等々、こちらが来て欲しくないのに勝手にやってくる連中のことである。
年度替わりは奴らにとってまたとない好機なのだ。マンションの前に引っ越し屋のトラックが止まっていると、何号室の引越かを調べ、引っ越し屋が帰った頃を見計らって、「ピンポーン」とやってくる。(特に新聞とN×K)

ある新聞屋とのやりとり

新聞屋の過剰なセールスは社会問題となって久しい。実際に私が経験した事例を書いておくことにする。(なお、私は最初から新聞の勧誘と分かっていたが、暇つぶしに相手にした事例である)
その男は「近所に来たので御挨拶にうかがいました」と言ってやってきた。「近所に来た」という言葉は、「近所に引っ越してきた」と勘違いさせようとしているが、ただ単に「近所を歩いてやってきた」という意味でしかない。
「いやぁ、御挨拶にねぇ」と言いながら、男は、タオルやゴミ袋を次々と私に手渡していった。手渡しながら、適当な会話を交わし(その中身は覚えていない)、その男は何か紙を取り出して、そこに何かを書き始めていた。
「ところで、新聞、どうですか?」遂に来た!と思いながら、「要りません」と断った。
「試しに1か月でもいいですから…」とその男。
「要らん」と断る私。
「まあ、そう言わずに、ホント、ちょっとの間でも良いので、仲良くしましょうよ」とその男。
「あんた、友達やないんやから…」と内心思いながら、「そう言いながら、さっきから何書いてるんですか?」と突っ込む私。
「いや、まあまあ…」と言いながら、書き続ける男。
最終的には「新聞は要らない。これも全部返す。もっと新聞取ってくれそうな家に行った方が良い」と助言?までして、お引き取りいただいた。
ただ、この時、二人とも笑顔だった。お互いに、このコミュニケーションを楽しんでいるような感じがした。第三者が見ていたら、漫才に見えたかも知れない。
おそらく、彼が私と話しながら書いていたのは、私の住所と契約期間だろう。そこに私が名前を書けば、契約成立になるように周到に準備をしていたのだろう。

「招かれざる客」側の事情

詳しい事情は知らないが、彼らの仕事は歩合制で、1件契約を取ればいくらという報酬になっているらしい。だからこそ、必死になっているのだろう。
この男は、まだ可愛いもんで、人によっては、もっと強引なのもある。玄関のドアに足を挟んでドアが閉まらないようにするというやり方も、わりと良くあるようだ。かつて、もう十年以上前になると思うが、インターホンすら無い家に住んでいたとき、玄関のドアに足を挟んで帰ろうとしなかった男がいた。「見えないから新聞が読めない」と言ったが、「何とかしたら読めるでしょ」と…。おいおい、目悪い奴に無理矢理新聞読ませる気か?と思ったが、とりあえず追い返した。
それとほぼ同時期、「なあ、お願い、新聞取ってぇなぁ〜」と、泣きついてきた爺がいた。あれは正直、キモかった。(ちなみに、その爺は、近所の新聞販売店の経営者らしい)
インターネットの契約についても、あれやこれやとやってくることがある。私は引っ越しする前に既に選んで契約しているので、入居時点で回線工事は完了していて、それを理由に断ればそれで終わりだが、そうでない場合には、ネットやケーブルテレビの契約をしてくれという営業が酷いようだ。新聞とも共通するが、一度契約を取り付ければ、継続的に利用してもらうことができるから、熱心に営業するのだろう。

「招かれざる客」の被害に遭わないために

では、これらの被害に遭わないためにはどうすれば良いか?について、書いておく。あくまで、追い返したい場合を想定しているので、契約したい場合は契約すれば良いだけの話である。決してこの記事では「契約するな」とは書いていないので、誤解無きよう。

定番は居留守

定番中の定番は、居留守を使うことだ。最近はテレビモニタ付きインターホンも増えてきているので、モニタを見れば、知人や宅配業者と区別することができる。部屋で音がする等の場合、しつこくチャイムを鳴らす奴もいるが、それでも放置する。そうすると、そのうち帰る。なぜなら、彼らは歩合制だからだ。無視されるなら、次に行き、契約を取れた方が彼ら自身にとっても都合良いのだ。決して、根負けしてはならない。

出てしまったら…

仮に出てしまった場合、ある程度の話術が必要になるかも知れない。私は上記の新聞屋の時のように、ボケとツッコミのようなやりとりで帰ってもらったが、あの男に押される形で契約させられている人もいるだろう。あの男の話術は、なかなかのものだったと思う。人当たりも決して悪くなかった。だから、こっちまで楽しかったのだ。そして、引き際も潔かった。先述した爺のような泣き落としで食い下がってくるのは、潔さもなく、ずっと気分が悪い。
とにかく、相手の目的は契約を取ること、それもひとつでも多く取ることなのだ。だからこそ、相手にとってこちらが面倒な相手と思わせることができれば、あまり勝負はかけてこない。護身術を2つ書いておくので、参考にして欲しい。

相手の身分を確認する

1つめは、相手の身分を尋ねることだ。「○○新聞の者ですが…」と言ってやってくる相手に対して、「○○新聞は知っているが、何支局の方ですか?」と聞く。販売店の者だと言われたら、どの販売店のどの立場の者か尋ねる。そして、身分を証する物(名札等)を持っているかを確認する。そして、「名刺をください」と言う。
歩合制でやっている人の場合(回ってくる人のほとんど)、身分証など持っていないし、支局にも販売店にも所属していないから、名刺も無い。つまり、「○○新聞の者」と言いながら、その新聞社の何者であるかも分からぬ、ただ怪しいだけの“不審者”なのだ。そんな奴に自分の個人情報を教えるってどうなの?といつも思うのだが、どうもこういう業界は、こういうやり方で成り立っているらしいから、不可解だ。
身分証を見せることも、名刺を渡すこともできない場合に、それを理由に帰らせるというやり方。これはかなり有効だ。こちらが迷っていると相手が強気に出るが、逆にこちらが強気に出れば、相手は引き下がる。繰り返すが、彼らは、面倒な相手と揉めたくないのだ。さっさと契約してくれる相手と契約し、その数を稼ぎたいだけなのだ。
これは新聞屋だけでなく、N×Kでも同じである。N×Kの場合、「どこの放送局の方ですか?」と尋ねて、まともに答えることのできる訪問者は、まずいない。なぜなら、本部が直接雇うことはないからだ。むろん、名刺など持っているはずもない。これまた、ただの“不審者”なのだ。
新聞屋と違って厄介なのは、法律を盾にすることだ。彼らはそれを、その部分だけを、まるで似非坊主が念仏を覚えるように、主張してくる。
それならそれで、こちらも法律で対抗すれば良いだけの話だ。「あなたはどちらの放送局の方ですか?」「身分証を見せてください」「名刺をください」おそらく黙り込む。そこで、「法律が云々はよく分かりませんが、どこの誰かも分からない、身分証を見せることも、名刺を渡すこともできないようなあなたと契約することはできません。こちらから放送局に連絡すれば法律上問題無いのですよね?」と念を押す。すると、さすがにそれ以上のことは言えないので、相手は退散するしかない。自分の業績にはならないが、相手が放送局に直接連絡する(「契約する」とは言っていないのだが…)と言っている以上、それ以上のことは言えないし、言いようが無い。彼らにとってはお手上げなので、帰るしかない。

不退去罪

2つめは、法律を使うことだ。刑法第130条に「不退去罪」というものがある。分かりやすく言うならば、こちらが「帰ってくれ」と言っても帰らない場合、不退去罪という名の犯罪になるのだ。これは相手が新聞屋でもN×Kでも関係無く通用する法律だ。
まず「帰ってください」と言う。それでも帰らない場合、「帰らないなら警察呼びますよ」と言えば、たいてい帰る。おそらく彼らも、こういう仕事をしているのだから、不退去罪ぐらい知っているだろう。不退去罪は3年以下の懲役または10万円以下の罰金だ。
スマホのカメラ機能を起動し、「帰ってください。警察呼びますよ」と言いながら動画を撮影し始めると、さっさと帰るだろう。今はそういう時代で、違法駐車とか電車内で暴れたとかの動画がネット上に晒されている時代だ。歩合制で稼げるとしても、自分の顔や声がネット上に晒される危険を冒す勇気は、さすがにないだろう。また、繰り返しになるが、こんなめんどくさい奴にかまってる暇があれば、他で契約を取りたいのだ。

招かれざる客にはロクなのがいない

いずれも、「契約するな」と言いたいわけではない。契約したければ自分自身の意思ですれば良いのであって、どこの誰かも分からない不審者と契約する必要は無いということだ。だいたい、まともな商品は訪問販売などしなくても売れる。新聞を取りたい人は自分で販売店に連絡して契約するだろう。N×Kも、最初から契約する人は契約している。「招かれざる客にはロクなのがいない」と言って良いだろう。