本稿は拙稿「消費税増税」が消える日の続編となる。

学生の不安

最悪なシナリオ

学生から、自分たちが就職活動をする時は景気はどうなるのか?と聞かれた。将来のことは分からない、と曖昧に回答した。もちろん、将来のことなのだから、分からないのは当たり前だ。こうなるだろうという予測はあるし、いろいろな人がしているが、そのどれもが、確定的なことではない。
そして、そうした予測をする際に、私たちは時として、最悪なシナリオを描くことが求められる。
私は既に「消費税増税」が消える日で消費税増税の危険性・有害性を述べてきたから、そちらも合わせてお読みいただきたいが、大学で教えている身としてタブーである最悪なシナリオを書くこととしたい。

第二次氷河期の可能性

今年、令和の時代が始まった。今大学生をしている人たちの親世代は、氷河期世代に入るか入らないかの年代が多いのではないだろうか?
来年、令和2年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される。今年10月に予定通り消費税増税が実施されたとして、それまでは景気は何とかなるかも知れない。しかし、そこで行き詰まるだろう。その先には、何があるのか?
学生を前にして、あまり口にしたくないのだが、私は、第二次氷河期が訪れると予測している。その頃の誰かが、またはそれ以後にいる誰かが、彼らのことを「第二次氷河期世代」とか「氷河期ジュニア」と命名するだろう。
そして、その時、令和元年10月の消費税増税をやめていれば…と後悔することになるだろう。

ケーキを食べると景気が良くなる!?

ゴールデンウィークで臨時休講となった分の補講が6月にあった。講義回数を確保しなければならないので、通常の時間割とは別に時間を設けて実施したが、学生には参加を強制せず、来たい人はどうぞというスタイルで実施した。そうでないと、他の講義や部活と重なり、参加が難しい学生が不利になるための措置だ。(その代わり、通常の講義は進めず、好き勝手なことを話すことにした。)
その講義で、「ケーキを食べて景気を良くしよう」という話をした。中身は景気循環の話で、Tシャツが売れたら車が売れるという、以前書いた話と同じで、例が変わっているだけだ。ゴロで面白いつもりだったが、いざ喋ってみると、マイクで話すため「ケーキ」と「景気」の聞き分けが難しく、余計に混乱させてしまったようだ。(申し訳ない…)

ケーキを食べて景気を良くしよう!

ケーキは、米や水と異なり、嗜好品のひとつだ。どうしても食べなければ生命が維持できないものではない。(「ケーキが命」と言う女子学生もいるが、別にケーキが無くても生存はできる)
そのケーキを、100人が食べたとする。すると、ケーキ屋は100個の売り上げ増となり、収益が増える。ケーキが売れるものだから、ケーキ屋はケーキを作るための材料(私は詳しく知らない)を仕入れる必要がある。その材料も売れることになる。そしてそれらを製造している会社が儲かり、そこで働く人たちの雇用も生まれ、あるいは安定する。これらの人たちが「せっかくだから…」と余分に1個ずつケーキを食べてくれるかも知れない。すると、さらにケーキの売り上げは増えて…以下、循環する。

消費税増税の何がいけないか?

では、消費税増税によって、どのような問題が起きるか?
ケーキに対する税金が上乗せされることにより、金額が上がる。人々は節約志向となり、消費が低迷する可能性が高い。仮に100人がケーキを我慢して節約すると、ケーキの売り上げが減り、ケーキ屋の売り上げも減る。仕入れる量も減るため、材料を生産する会社や流通業者の仕事が減り、そこで働く人たちの雇用が不安定になり、最悪の場合は失業する。こんな状況下で、のんきにケーキを食べる余裕は無くなるだろう。
文字にすれば分かりやすいが、確かにこれを音声だけで話すと、どっちがどっちか分からん!と言われても、仕方ない。面白いつもりだったが、裏目に出たので、反省している。
「物が売れなくなる」ということは、「景気が悪くなる」ということとイコールと考えると分かりやすい。消費税は、消費、つまり物を買うことに対して税金をかけるという仕組みだ。消費税を払いたくなければ、買う量を減らすしかない。
消費税が無ければ100円で買うことができた物が、消費税10%では110円となる。もう一つ、別の例を挙げる。

回数券がお得ではなくなる

電車に乗る時、10回分の金額を前払いすれば11回乗ることができるというのが一般的な回数券だが、1回分おまけしてもらったつもりが、その分は消費税として払わされていることになるのだ。バカバカしいとしか言えない。100円で乗れる区間はほとんど無いので、500円区間を例にする。5,000円で回数券を買うと、500円区間を11回乗ることができる。結果、500円得したことになる。ところが、消費税10%の場合、単価が550円となり、5,500円で回数券を買うと11回分乗ることができるが、消費税が無い場合と比べると、何も得をしていない鉄道会社に払っていた分を税金として持って行かれている、ということだ。先に「バカバカしい」と記したが、この例を読んで、そう思わないだろうか?

批判に抗して

駆け込み需要が発生しないホントの理由

駆け込み需要が無いから増税しても良い、などという意見もあるらしいが、駆け込み需要が無いのは、既に消費が冷え込んでいるからだ。内閣府が8月29日に発表した消費者態度指数(季節調整値)は前月比で0.7ポイント低下し、前回消費税を5%から8%に引き上げた平成26年4月以降、最低水準となった。しかも、11か月連続で前年を下回り続けているのだ。この現実を見て、「駆け込み需要は無い」などと脳天気なことを真顔で言う者たちは、余程の阿呆か不勉強だ。もう少し勉強しなおした方が良い。(まあ、そういう者たちが私の講義を受けるとは思えないが…)
消費税を上げなければ財源が無い等の批判は必ず出てくる。しかし、これは後付けでしかない。財源を消費税増税とリンクさせているだけで、その固定観念から抜け出せていないから、そういう批判しかできない、というだけだ。財源の確保については、いくつも他に選択肢はある。その中であえて消費税を選び、またそれに頑なに固着する理由を、十分に疎明できていない。(そりゃそうだ。彼らの主張の根源には「消費税増税で確保した財源を充てると政府が言っている」以外の理由なんて無いんだから…)

所詮「取らぬ狸の皮算用」でしかない!

さらに、消費税増税で財源が確保できるということ自体が、「取らぬ狸の皮算用」でしかない。それで消費が落ち込み、景気が低迷すれば、むしろ税収減となる。しかも、消費税を上げたことで、景気が悪くなり、企業の経営が悪化し、雇用が不安定になるか失業すれば、法人税、所得税等、他の税収まで落ち込んでしまう。まさか、そうなればさらに消費税を上げるとか、所得税や法人税を上げるとか、言うのではあるまいな?

学生でも解けるカラクリ

以前、学生たちと議論をしていて、「どうして金持ちの大企業にもっとたくさん税金をかけないんですか?」と問われたことがある。そんなことを言っている政治家や政党があるから疑問に思ったのかも知れない。そこで私はその学生たちに「もし自分が大企業の経営者だとする。税金が高くなれば、どうする?」と尋ねた。学生には難しいかな?と思いながら、わざわざ私の講義が終わってから教室に残って質問をするぐらい熱心で真面目な学生たちが相手だったこともあり、せっかくだから考えてもらおうと思って聞いたのだが、一人の学生が「外国に行く」と即答した。他の学生たちも、「あっ、そうか!」「そうだよね」とうなずいていた。「そんなことあるか!」と言う学生は、誰もいなかった。その場にいたのは、真面目で優秀な学生ばかりだったが、学生でも少し考えれば分かるようなことを、分からないのか、それとも分からないふりをして世論を扇動しているのか、そういう政治家ないし政党は、国民を馬鹿にしているとしか思えない。

「憂国」から「救国」へ

こんな優秀な学生たちの将来を思うと、彼らが就職活動をする頃に第二次氷河期が訪れることは、なんとしても避けねばならないと強く思う。彼らを「氷河期ジュニア」などと呼ばせてはならない。そのために、私たちは、今できることを必死でしなければならない
それは、10月の「消費税増税を阻止」することだ。与党支持者も野党支持者も、右翼も左翼も関係無い。日本のこと、日本の将来のこと、若者たちの未来を思うのであれば、一人でも多くの人たちが「消費税増税阻止」の声を上げることだ。
老若男女を問わず、若者の将来をダメにしてやろうなどと思っている人はいないだろう。どのような思想信条の持ち主でも、自分たちの未来に暗雲が立ちこめることを望む人はいないだろう。
日本をダメにしてやろうと企てる外国のスパイか、悪魔の使いか、低級霊の塊でもなければ、皆思いは同じはずだ。

自民党は消費税増税でも安倍首相は(おそらく)そうではない

自民党が消費税増税を主張している、というのは、実は誤解だ。日本の自民党は、アメリカで言えば共和党と民主党が一緒になったような組織で、消費税増税賛成派も反対派もいる。自民党という組織として、消費税増税を推し進めることに決めたから、自民党の議員である限り、そう主張する他ない。だから7月の参院選でも、自民党は消費税増税を主張した。いや、組織に属する以上、そうしなければならなかったのだ。
安倍晋三首相は自民党総裁でもある。自民党総裁である以上、自民党の決定に反するわけにはいかない。「実はオレ、消費税増税に反対なんだ」などと、公の場で口が裂けても言えるはずがない。したがって、私が直接または間接に、安倍総理の意向を聞いたわけではないが、安倍総理は、ほぼ間違いなく、消費税増税に反対していると、私は確信している。

増税を押し通そうとする犯人

察するに、消費税増税に賛成しているのは、財務省と麻生派だろうが、彼らこそまさに、消費税増税で確保した財源で云々と「取らぬ狸の皮算用」をしてきた張本人ではないか!
「二度あることは三度ある」では面子が立たん。そういう変なプライドのせいで、国民を苦しめ、日本を貶めるとしたら、まさに亡国の思想と呼ぶ他なかろう。あるいは、公僕の身にありながら、日本を滅ぼそうと企む者(たち)の手先と成り果てたか?
誰のおかげで今の地位があるのか?を考えてみるべきであろう。自分の努力と功績で地位を得たと思い込んでいるかも知れないが、そこへたどり着くまでには、幼き頃に保健福祉の世話になり、公教育を受けてきたではないか。日々安全で健康に暮らせているのも、日本という国があるからではないか。日本人であることで、様々に権利を保障されてきたではないか。また、誰に飯を食わせてもらっているのか?も自問自答すべきであろう。国民の税金で食わせてもらっているのであれば、まず第一に、現在の、そして将来を担う国民のために、あらん限りの能力と労力を投げ打って、最善を尽くすべきではないのか?
消費税増税を推し進めようとする者たちに「良心はあるのか?」「国の将来を憂う気持ちがあるのか?」「若者の未来を思う心があるのか?」問いたい。国の将来を憂う志が芥子粒ほどでもあるならば、「消費税増税」など真顔で主張できるはずもない。自分の子や孫が第二次就職氷河期に直面し、「氷河期ジュニア」と呼ばれて良いのか?
もしも国の将来を憂う志が無いなら、今すぐ公僕の職を辞せ!(職業選択の自由は憲法で保障されている)

「救国」への志

今まで、誰が見ているか分からない公の場所では、あまり踏み込んだことは記してこなかったが、右も左も、老いも若きも、あらゆる思想信条を超えて、挙国一致して「消費税増税阻止」を訴える。その目的のために、ここに記すこととした。
改めて申し上げる。今私たち一人一人にできることは、「消費税増税阻止」の声を上げることだ。
国の将来を憂い、若者たちの希望に満ちた未来に思いを馳せるならば、「消費税増税阻止」の声を上げることだ。
そして、救国の志士となろうではないか。