出町王将が閉店・その後

ありがとう!出町王将という記事(令和2年10月31日付)で、学生時代からの思い出を書き連ねている出町王将(餃子の王将出町店)。思い出話はそちらの記事をご覧いただきたいが、このほど、「いのうえの餃子」という店が開店した。この店は、出町王将の店長であった井上定博さん(出町のおっちゃん)が新規開業した店舗で、言わば、出町王将の復活となる。ただし、かつてのフランチャイズ店とは異なり、餃子の王将とは別物。もちろん、王将ロゴも使用されていない。

青春の復活

真夜中のショートメッセージ

2月9日の深夜(ちなみに2時56分)、1通のショートメッセージが届いた。
井上店長からの連絡で、「いのうえの餃子」という屋号で店を始める、とのこと。
「いつかこういう日が来るだろう」と、心のどこかで期待していたが、出町王将の閉店(令和2年10月31日)から2年4ヶ月の時を経て、ようやく訪れることを知り、非常に嬉しい気持ちとともに、懐かしさがよみがえった。その懐かしさとは、ありがとう!出町王将という記事に記したことであり、また、書き切れない20年あまりの日々、それも当たり前のように過ごしていた日常の連続であった。
一人暮らしを始めた学生時代に始まった日常は、社会人になって、大阪に移ってからも続いていたが、出町王将の閉店とともに、途切れてしまっていた。
出町王将、そして井上店長との別れは、自分の若き日々との別れでもあった。

運命の時

それから、新店開店に向けた準備は進められていた。井上店長とは、ショートメッセージや電話で何度かやりとりを重ねる中で、「3月3日のお雛さんの日からにするわ」と教えてもらった。
3月3日はひな祭り。いや、確かにそれもあるが…
研修会の講師をするため、京都にいる日じゃないか!
あまりのタイミングの良さに、研修終了後、タクシーで急行した。研修が終わったのが19時半、閉店時間は20時と聞いている。「間に合うか?」と思いながら、半ば“ダメ元”覚悟で出町枡形商店街に開店した「いいのうえの餃子」に駆けつけると、井上店長が「おお、青木くん。入りや」と出迎えてくれた。餃子が残っていないかも知れない。店が終わっているかも知れない。でも、挨拶だけでもできたら…と思っていたが、店に入ることができ、しかも、餃子定食を食べることも叶った。
懐かしい餃子の味。王将の餃子とは違う、より本格的な餃子の味。
餃子を味わいながら、同時に、懐かしき日々を味わっていた。

受け継がれる伝統

定番の「30分皿洗いをしたらご飯タダ」は、この店にも受け継がれている。開店時刻には店の前に行列ができ、多数の報道陣が訪れていたようだ。
閉店時刻(もしかして閉店時刻以降だったかも?)に行ったため、行列に並ぶこともなく店内に入れたのは、幸いだった。2年4ヶ月ぶりに、井上店長と直に話すことも叶った。

復活の先にあるもの

コロナ禍も徐々に落ち着き、大学も対面授業という、今まで当たり前だった状態に戻りつつある。コロナ感染防止というタテマエで大学から閉め出され、オンラインでの学習を余儀なくされ、使えない学内設備の使用料を請求されるという、“ぼったくり”以外の何物でも無い状況に虐げられていた学生たちも、ようやくまともに教育を受ける権利を取り戻しつつある。
これから始まる新学期・新年度は、多くの大学が元通りに戻ると見込まれる。それで良いし、そうすべきだ。オンラインで受けたいという需要は一定程度あるが、それはそれとして、通信制の大学や学部でも作って別にやれば良いわけで、通常の(オンラインではない)大学教育を受ける権利を侵害することを正当化すべきではない。
「いのうえの餃子」がある出町枡形商店街は、京都大学や同志社大学など、多くの大学が近くにあり、かつての私と同じように、大学に通うために一人暮らしをしている学生も多い。この春から一人暮らしを始める学生も多いだろう。
「いのうえの餃子」とはどういう店なのか?と気になった方は、是非一度、足を運んでみて欲しい。そして、もしも食べるのに困っている人がいたら、30分間の皿洗いをして、おいしい餃子や唐揚げを食べてきて欲しい。
コロナ禍が経済活動に与えた影響は甚大で、そこに物価の高騰が重なり、生活に苦しむ人が増えてきている。
自分の努力だけでは、どうにもならないこともある。がんばれる人はがんばれば良い。努力できる人は努力すれば良いし、努力すべきである。しかし、どうにもならないとき、誰かの助けを借りれば良い。助けを得ることは、恥ずかしことではない。後ろめたいことでもない。
誰でも、一度や二度は、誰かに助けてもらっているはずで、助けを必要としているならば助けてもらえば良い。そして、助けを必要としている人と出会ったとき、今度は自分が助けてあげれば良い。
出町王将から「いのうえの餃子」へと看板が変わっても、井上店長も、餃子の味も、そして助け合いの精神も、そのまま受け継がれている。
ちなみに、王将のロゴが入っていない食器類は、出町王将時代から井上店長が独自にそろえていたものだが、その食器も使われている。
定休日は火曜日。

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